コロナ、アマビエ、まちの宮市

2022年5月4日に開催された「杜の宮市 re:20th」。2020年5月5日に開催予定だった第20回杜の宮市がコロナ禍で中止となり、アマビエのフラッグを駅前に飾り、まちの宮市が生まれ、そして第20回を再度開催されるまでの、ささやかな戦いの記録です。
2019.5.5 杜のアトリエ
2019年5月5日、快晴の下で開催された「第19回 杜の宮市」。人で混み合う会場のほぼ中心に建つ「オリナス一宮」では、「杜のアトリエ」という特集イベントが開催されました。内田新哉さん、鯉江あかねさんをゲストアーチストとして迎えての、展示とワークショップです。
鯉江さんは布と風船を組み合わせた巨大な体験型オブジェ「でちゃったもんだい」と、カラフルな糸や綿でキーホルダーを作るワークショップを。内田さんは子ども達の全身を紙に記録する魚拓ならぬ「子拓」づくりと、桜満開の真清田神社の風景を参加者とともに完成させるワークショップを。また豊明市にある少年院の豊ヶ岡学園で、内田さんが指導して少年達と描いた大きな桜の木の絵が2作品、展示されました。製作には杜の宮市のスタッフも参加しています。
この日「杜のアトリエ」にはアートを通じた世代間・地域間の温もりある交流が広がっていました。
2020.2.26 コロナを越えて 繋がる未来を
節目となる次の第20回は、2020年5月5日に開催が決定。一宮駅前から本町商店街に至る銀座通を全面的に歩行者天国にして会場の一部とする形で、準備が始まりました。一宮市のウォーカブルタウン構想に呼応するものです。その銀座通では「帰ってきた大せんい市」「キッチンカージャンボリー」などを新たに計画していました。
ひたひたと迫りくる新型コロナウィルス感染症の状況は、徐々に緊張感を増していきます。検討を続けていく中、2月26日に「第20回杜の宮市」の中止を発表しました。
既にお預かりしていた200万円以上の出展料を全額お返しすることにしたのですが、多くの方々から合計60万円以上となった寄付をいただきました。
この寄付を基として、なんのさわこさんが描いたアマビエの絵のフラッグを120枚、銀座通に飾りました。「コロナを越えて つながる未来を」というメッセージを添えて。フラッグはその後一年以上、風に揺らぎ雨にさらされながら一宮の街を見守っていました。
2020.11.13 まちの宮市
ウイズコロナの中でどのように、カルチャーとコミュニケーションを地域で守っていくか。新型コロナウィルス感染症がどんなものか不明なまま、一方では今まで通りに行われるイベントがあり、他方では一切の活動が停止となっています。しかしゼロでもヒャクでもない 1 から 99 のどこか、ブレーキを踏み込むのでもアクセルを踏み続けるのでもない進み方のどれかに、何らかの道筋はないか。
模索する中、”ゼロ密を目指すクラフトフェア”として組み立てていったのが「まちの宮市」です。野外での開催、広い会場に大きく間隔をとったブース配置、路上でも来場者の登録と人数把握で3密を避けつつ、ゆるやかな開催を目指す、おだやかなプチ「杜の宮市」です。
開催日は、ほぼ毎月ある「38サンデー」(3か8が末尾につく日曜日)。一宮のまちの興りである「三八市」に由来します。2020年11月13日から開始し、緊急事態宣言下の3回は中止としたものの、この3月までに12回、開催してきました。
3,800人には至らぬ、ほどほどの人出でありながら、豊かな会話と確かな販売も育ち、安全安心な賑わいの創出に少しずつ近づいてきました。
2021.11.18 杜の宮市は、やらな、いかん
実験的でもある「まちの宮市」の開催を続けながら、文化と交流をどう守るか、元の大きな「杜の宮市」は開催できるのか、次世代への継承をどうするか、コロナはどうなるのか、やらないこともまた大切では・・・議論は堂々巡りのまま一年が経とうとしていました。
2021年11月18日、ある人物の大切な言葉をきっかけに、もう一度杜の宮市をやろう、結果としてできなくなっても、開催を目指して準備はしようと、急転直下の決定。
再生、再興、再誕、再起、再会…様々な意味を込めた「re」。開催中止となった杜の宮市の復活版として「杜の宮市 re:20th.」の準備が、大きく遅延しつつもスタートしました。状況が変われば、直前でも当日でも開催中止にしますと伝えながら。
2022.5.4 杜の宮市 re:20th.
杜の宮市では毎回、パンフレットの表紙などを飾るメインのアーチストを選びます。「杜の宮市 re:20th.」ではどうするか。
実は内田新哉さん、2019年にもう一枚、真清田神社をテーマとした絵を描いていました。
この地のシンボルであり、杜の宮市の出発地点でもある尾張国一宮真清田神社の絵。少し強い青空の下、たおやかに存在し続ける杜と社。この絵を、再開する杜の宮市のメインのモチーフとしたいというお願いに、内田さんは快諾してくださいました。
平和だった2019年。コロナ禍に翻弄される日々。アマビエそしてまちの宮市。
コロナを越えて、つながる未来を
ウイズコロナの中でも文化と交流を
繋がり、広がり、溢れるように
今日の会場にも、豊ヶ岡学園の少年たちの新たな絵が飾られます。今回も杜の宮市のスタッフが製作に参加しました。
そしてこの内田さんの絵も同じ大きさの布絵となって、会場に飾られています。
(2022年5月4日 星野博)
